FileMaker選手権2020の結果が公開されています。
レビューした結果で受賞作品が決まっていると思うのですが、内容についてのコメントが無いので勝手にレビューして設計まで踏み込んでコメントします。
ファイルがダウンロード出来る
について順番に記事を公開していきます。ちょうど4作品ずつになります。
今回は最後のエンジニア経験者部門。
※Dropbox賞でレビューして欲しいという方がいらっしゃいましたのでさらにレビュー記事は続きます。
評価基準
FileMaker選手権2020の評価基準は当初から提示されていました。
下記内容です。
デザイン:使いやすく、見やすいデザインか
技術正確性:エラーが起きないか
機能多様性:課題解決のための機能は揃っているか
創意工夫:新しい発想かどうか
新技術の利用:新しい技術を取り入れているか
受賞作品
受賞作品は下記4つ。金賞はMacBook Pro、銀賞はMacBook Air、銅賞はAirPods Pro。
金賞:モデラーズフリー(作:賀東穴鈴)
レイアウトからして、かなり趣味的なカスタムAppですね。
プラモデルの制作管理をするカスタムApp。
機能的には
写真へのお絵かき機能
カレンダー(アドオン)
ギャラリー(アドオン)
Netflix等のアプリを呼び出す機能
概要と、受賞の裏側の話が動画で公開されています。
概要
受賞の裏側の話
画面は趣味的。某人気ロボットアニメの敵軍の制服を思い出します。
容量部分は繰り返しフィールド
お絵かき機能で使用した塗料の場所を書き込んでいます。
おそらく、使用した材料を串刺しで検索出来ることがこのカスタムAppのメイン機能かと。
先程のV2アサルトバスターガンダムのスミ入れと同じガンダムマーカーをEGガンダムに使用している。
マニュアル
アプリ内にPDFでマニュアルが用意されており、iPadだと下からにゅっと出てきます。
画面遷移図で画面名の□をタップすると該当するページへ移動します。
名言
トップメニュー真ん中のボタンを押すと出てくる名言は、スクリプト内の「テキストを挿入」スクリプトステップで変数に定義されています。そのテキストは暗号化されており、CryptDecryptBase64関数で複合してからGetValue関数でランダムな行を表示するようになっています。
一見してどんなテキストが出てくるか解らなくなっています。
ヘッダのリンク
ヘッダにあるボタンは各種動画サイトへのリンク。ここから起動した場合は左上のボタンで容易に帰ってくることが出来ます。
設定されているURLスキームは変更できるので、よく使うようなアプリを登録しておくと良いかも。
お絵かき機能
お絵かき機能はDB ServicesさんのFM Draw Add-Onを使用していますね。
FM Draw Add-On
リレーションはシンプル
右半分はアドオン
レイアウト
iPhoneは想定しておらず、iPadのレイアウトのみ。PC版もiPadのレイアウト。カメラボタン等のPCで動かないボタンについてもそのまま配置している。
スクリプト
スクリプト内のコメントは西暦ではない日付になっていますね。世界観を大切にしていますが、開発のコメントとしてはあまりよくない。
総評
完成度が高いと思います。今回レビューしている12作品の中でマニュアルを一番作り込んでいます。マニュアルは開発工程としては一番最後に来ます。それを作り込んでいるということは締め切りギリギリではなく余裕を持ったスケジュールだったのでしょう。
極めて趣味的なカスタムAppですが、例えば設備点検などに転用できそうな気がします。デザインはちょっとビジネス的ではないので、変更すれば良いかと。
上のNetflix等の各種動画アプリを起動させるボタンは必要なのかは疑問な所。ただ、別のビジネスアプリに転用する場合にこの機能は使えるかも。例えば連携するアプリを呼び出すショートカットに使用するとか。
銀賞:RihaTaskAD(作:jaknow)
専門的過ぎて機能についてのレビューはなかなかしずらい作品です。
ざっくりキーワードで説明すると下記になります。
医療系のシステム
リハビリ分野
お絵かき機能搭載
医事会計ソフト(ORCA)と連動
FileMaker選手権サイトでの説明
医療機関でのリハビリテーション業務に必要な「リハ処方せん」「訓練予定」「訓練記録」を作成でき、同時に算定要件として必要な「リハビリテーション実施 計画書(令和2年度改訂版)」および「目標設定等支援管理シート」のPDF作成がおこなえる。実運用では、リハビリテーション対象患者の基本情報などは日医標準レセプトソフトのAPIから取得(SSL証明書対応)可能であり、セラピストの業態に適応できる様に業務全般をiPadで行えるようにしたソリューションである。
検索した限りでは、株式会社エムシスさん開発の、このソリューションが元でしょうか。
中身を見るには、「管理者」ボタンを押せばアカウントとパスワードが入るのでそのままログインできます。
画面は落ち着いた感じで医療系っぽいデザイン
レイアウトは多いが、画面として使用しているのは「Interface」フォルダと「Anchor」レイアウト。
お絵かき機能
シェーマ画像にお絵かき出来る機能があります。iOSはショートカットアプリ、PCはWebビューアで実装されています。
ここからシェーマ画像を選択する
Macでシェーマ画像から編集しようとすると選択した画像とは別の画像(横向きの顔)が出てきてしまいました。何回かボタンを押すと選択した画像が出てきました。Webビューア周りはバグが起こりやすいですね。これも開発者の環境では動いていたのかもしれません。
■テーブル
テーブルに「修復されたライブラリ」があるのがすごく不安です。
※FileMaker選手権サイトで公開されているファイルを展開して開くと修復が始まります。
フィールド名は英語。
■リレーション
そこそこ大きいリレーション。
■スクリプト
スクリプトは多い
バーコードでログインする機能はボタンはあるが実装されていないが、このスクリプトはその機能用のバーコードを生成するスクリプトなのかも。
納品した痕跡のある生々しいコメント
■総評
医事会計ソフト(ORCA)と連動する単体では完成しないカスタムAppです。またバーコードログイン機能は実装されていません。
本製品は近い将来正式リリースも行いますが、今後医療機関においてFileMakerがよりよいシステム構築のプラットホームになりえる製品だという事が医療関係者に広く伝わればと思い応募する事といた しました。
と、ヘルプに書かれている通り、途中まで作った自社ソリューションを応募されたようです。
となるとファイルが破損していた件はソリューションとしてはちょっと気になるところですね。
銅賞:温泉巡り(作:hide)
地図は国土地理院の地図をLeafletで表現している。
LeafletはWeb地図のためのJavaScriptライブラリ
Wikipedia
サイト
スプラッシュ画面がある。猿が可愛い。Macで起動すると位置情報が取得できない案内が出る。親切。
サルはカスタムAppのアイコンにもいます。
一覧/詳細画面
レスポンシブデザイン(iPadの縦横どちらでもOK)
詳細画面
写真ボタンはiPadのみで動作するので、FileMaker Proで見た場合は表示されないようになっています。この辺、丁寧ですね。
全体マップ
今まで行った温泉にピンを立ててくれます。画面下部の三角のボタンを押すと現在地を自動的に更新してナビゲーションアプリ的に使えるようになっています。
この全体マップですが、縮小させると現在地のピンの位置がずれます。拡大させると合っているので実用上は問題ないかと。
iPhone、iPad用レイアウトを作成
リレーションは綺麗。
「写真ギャラリー」アドオンを使用
このギャラリー機能ですが、カメラの挿入は上手く行きますが写真(写真が保存されるアプリ)からの挿入は上手くいきません。
iPad Air4で検証しています。
スクリプト「画像追加」の27行目に0.1秒待つ処理を入れると上手く挿入出来るようになりました。
作者の環境では上手く動いていたのかもしれません。最新のiPad(iPad Air4)なので動作速度が早くて処理が間に合わなかったのかも。Webビューアはそういう所ありますね。
設定画面では値一覧の項目を編集できる
スクリプト
想定外の引数が来た場合の処理をちゃんと書いてる。そうそう、こういう処理を入れておくとバグを防いでくれる。
総評
iPhone/iPad用のレイアウトやPC/iOS端末でのボタンの制御。端末の違いを丁寧に処理しているカスタムAppだと思います。
地図を使ったカスタムAppはライセンスの問題で制限されるのですが、ちゃんと問題ない地図サービスを使用しています。安易に作るとGoogleMapやオープンストリートマップを使ってしまう所ですね。
趣味的なカスタムAppですが、温泉ではなく別のものに置き換えても使えそうです。
一つ要望を言うなら全体マップのピンをクリックしたら該当温泉が開いてくれれば。
銅賞:英字むすびパズル(作:川島)
一見どういうカスタムAppなのか解らないので先に下記画像を見ていただければ。
同じアルファベット同士を隙間なく繋ぐルートを解析するカスタムAppです。ジャンルとしては『ゲーム攻略系』でしょうか。
動作させると左上のBから黄色いマスが伸びてきて、あっちかな?こっちかな?と伸びていきます。間違った方向だと帰ってきます。
「ナンバーリンク」とも言われるゲームです。
※ナンバーリンクはニコリの登録商標
このパズルを解く問題ははプログラムの「アルゴリズムデザインコンテスト」の題材として採用されています。コンピュータに行わせるには良い題材なのでしょう。
アルゴリズムの設定が出来る
設計
普段業務システムを開発している人間からすると想像が付かない内容となっています。
総評
正直、まともにコメントできる立場にいないです。
下記サイトによると、ナンバーリンクは
理詰めよりひらめきが重要
「ひらめき」が重要視されるので、コンピューターとの相性は決して良くありません
と書かれているので、それをFileMakerで実現したことはもっと評価されても良いのかもしれません。
これにてFileMaker選手権2020受賞全作品レビューは終了です。
応募総数 54 作品
受賞数の枠としては
開発未経験者部門:4
エンジニア経験者部門:4
審査員特別賞:4
Claris賞:20
Dropbox賞:20
計:52
複数作品の応募もあるので、応募した方は全員何か貰えたのではないでしょうか。
コンテストとしては美味しいコンテストだと思いますので、次回があれば是非応募しましょう。
次は番外編です。
Dropbox賞を受賞の方からレビューして欲しいという要望がありましたのでレビューします。
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